スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私自身であることを証明する限界

 遺言を遺そうとお考えの方の中には、不動産をお持ちの方も多いと思います。ですが、あなたがその不動産を所有している事をちゃんと証明できますか?

 不動産を取得すると、一般的には「登記済権利証」が作られると認識されている方、また現に権利証を金庫などで保管されている方も多いと思いますが、実は、権利証は、法務局という役所に、不動産の所有者の書換手続を行った手続用紙の控えでしかありません。もちろん重要書類であることには変わりませんが、株券や預金証券のような有価証券ではないのです。つまり、「権利証=不動産を持っていること」ではないのです。しかも現行法では、いわゆる権利証制度は廃止されました。詳細はほかに譲るとして、遺言で不動産を誰かに遺そうとすると、果たしてこの不動産が本当に遺言者の所有であると証明することが出来るのでしょうか。

 日本の不動産には、すべて登記簿が備えられています。登記簿には不動産の基礎的な情報のほかに、所有者が誰であるのか、所有権以外の権利が負担されているのかなどが記載されています。この登記簿の所有者欄には、いつ何処の誰がどういう理由で取得するに至ったのかが「平成○年○月○日売買 住所 氏名」というように記載されます。不動産を取得すると、法務局にこの登記簿の所有者の記載を書き換えて貰うよう手続を行うのですが、所有者が変わるたびに追加されるので、現在の所有者は一番新しい欄に記載された方であろうと判断されます。この手続申請を行い、処理が済んだ申請書の控えが登記済権利証だったのです。(現在は登記識別情報という記号が交付されます。)

 しかし、登記簿に記載された住所は、通常、不動産を取得した際のものが記載されています。マイホームを購入した方は、購入してから引っ越すことが通常でしょうから、マイホームの所在地とは違う、1つ前の住所が記載されていることがしばしばあります。ところが住民票は市外(京都市など政令指定都市では区外)転出後、わずか5年で廃棄されます。1つ前の住所は、転入前として記載されますが、不動産取得後2回引越して5年が経過すると、もう登記簿の住所と現在の住所の連続性を示せなくなります。

 これはお亡くなりになったときも同じで、死亡後5年で住民票は取れなくなります。住民票が取れなくなると1つ前の住所どころかお亡くなりになったときの住所すら証明できません。こうなってしまうと法務局に登記を受けた人と亡くなった人が同一であることを証明することは格段に難しくなります。もちろん権利証など資料がすべて調っていて相続人間にトラブルがなければ、対策はあるのですが、相続人間で争いがあると、その不動産が誰のものになるかが決まるまでに住民票が取れなくなるかも知れません。

 遺言作成のご準備などをしている過程で住所が古いままであることが分かれば、修正することもずっと簡単ですし、公正証書で遺言を遺せば相続人間のトラブルもずっと少なくなります。転ばぬ先の杖ではありませんが、登記簿の確認と遺言による相続人間の争い回避は必要なのかも知れません。

平成24年6月15日
 弁護士法人白浜法律事務所 事務局事務長 田 村 彰 吾
 監修 弁護士 白 浜 徹 朗

遺言で寄附をする

自分の遺産をお世話になった施設や学校などに寄附をしたいという方もおられますが、これには、遺言が便利です。施設や学校などを特定して、その施設などに何を渡したいのかを、遺言書に書けばいいということになります。

ただ、住居などの不動産については、たとえ遺贈で寄附しようとしても、施設によっては寄附を断るところがあるということです。処分に手間がかかったり、家財道具などの処分が難しかったり、お位牌など処分しにくいものがあったりすることを考えると、不思議なことではないように思います。

このような場合、不動産などの資産を遺言執行者が処分して現金に換えてから、お金として寄付するという方法があります。弁護士としての法律に関わる興味という点からしますと、この場合に譲渡所得税が発生した場合には誰が負担するのかという問題があるのですが、税務の実務処理としては、執行者限りで譲渡所得税を申告して納税すればよく、寄附を受けた施設などには、この税金を支払った残金をお渡しするという処理が行われているように聞いています。このような税務処理などもありますから、実績のある弁護士事務所を遺言執行者として指定しておけば安心ということになります。

せっかく寄付する以上は、気持ちよく受け取ってもらいたいということがありますから、その処理まで考えた遺言書にしておきたいものです。

平成24年6月11日  弁護士 白 浜 徹 朗

養子縁組と遺言

誰かに遺産を渡したいというときの方法としては、遺言を書くことに限られるわけではありません。養子縁組をすることでも、養子になった方に遺産を相続させることができます。

養子縁組は、結婚と同じで、遺産を譲りたいという人との間で養子縁組をして、近くの市町村役場に届ければ成立します。簡単な手続で確実な効果が得られることになります。

遺言との大きな違いは、養子縁組は、養子という相続人を創るものだということです。従って、お子さんがおられない方には養子縁組はいい方法ですが、既にお子さんがおられる方の場合には、相続人が増えるだけということになります。相続税の面でも、控除額が増えて、少しお得ですが、税法上は、沢山養子縁組をしても、養子は1人しかいない扱い(但し、全く実子がいない場合には2人までは認められます。)をしますので、注意が必要です。なお、孫を養子にすることで、1代飛ばしての相続も可能ということにもなります。

最大の問題点は、養子縁組は、解消することが難しいということです。遺言は、いつでも、法律の定める方法に従う限り、受け取る側の意向に関係なく、違う内容に書き換えたり、なかったことにしてしまうということができますが、養子縁組の場合には、離婚と同じように、離縁届に相手の署名をもらうか、家庭裁判所に離縁の調停を申し立てて、合意に至るか、裁判をして勝訴しない限り、養子のままということになります。遺言で遺産が渡らないようにしたとしても、遺留分という制度で遺産がもらえるということになってしまいます。

私は、この離縁手続に関与したことがあります。長い間お子さんに恵まれなかった老夫婦が、養子を迎えたところ、同居もしてくれないばかりか、悪態をつかれたりするようになってしまったという案件でした。離縁は、離婚と違って、調停などになっている事件の数は少ないのですが、大概の場合、相続に絡んだ問題になっているように思います。

弁護士としての経験上は、息子さんのお嫁さんなど、人柄もよくわかっているような人を養子にするということなら養子縁組をお薦めしますが、それまであまりつきあいもしておらず、人柄もわからないような人を養子に迎えることは、あまりお薦めできません。遺言書で遺産が渡るように配慮した上で、事実上同居を開始して、うまく親子としての関係が築けそうだという確信が得られた段階で、養子縁組をするという方法がいいのではないかと思います。ただ、そこまで慎重なことをしようとしたら、実際上は、養子には来てくれないという問題もあります。家族になるということは難しいことですね。

2012年6月4日   by 白 浜 徹 朗

自筆の遺言書は執行できないこともある!?

 一般的に「遺言書」と言えば、遺言者の直筆で書かれた手紙か指示書のようなものを想像されるかも知れません。事実、民法典では①(遺言の)全文、日付及び氏名を自書しなければならず②(遺言者は)押印しなければならないと定めています(民法第968条第1項、この様式で書かれた遺言を「自筆証書遺言」と言います。)のでイメージ通りのものでも法的には有効といえるでしょう。

 しかし、このような遺言書に書いてある手続を実行(「遺言執行」といいます。)するに当たっては、実務上は困ることが多いのです。

 まず、自筆証書遺言は、その遺言書が封筒などに封入されている場合、発見後その場で開封してはいけません。必ず家庭裁判所で開封することになっています(民法第1004条第3項、「検認手続」といいます。封印されていないくても検認手続は必要です。)。家庭裁判所での開封作業には、法定相続人全員に対し裁判所から呼出状が送付されることになります。もちろん呼出があっても、裁判所に出頭されない相続人さんもいらっしゃいますが、呼出状は全員に送付されます。このため遺言書を発見した人は、遺言者の法定相続人をすべて調査し、裁判所に届け出なければなりません。この検認手続をすると、自筆で書いた遺言書に家庭裁判所で検認をしたという書類が添付されることになります。

 ようやく検認手続を開催できても、検認手続中、相続人の一人が、その方にとって望ましくない内容であった場合に「遺言者の自筆でないと思う」などと裁判所に意見を残すことがあります。こういった場合には、遺言無効の裁判につながることも多く、遺言執行の際の大きな障壁となります。

 検認手続が終わったとしても、さらに遺言書に書かれている財産の特定が不十分な場合(例えば「自宅を」○○に相続させる、など家族間にのみ通用する財産の呼び名で分配する遺産を特定している場合など)があります。このような場合、登記実務では、相続人全員が「この遺言書に書かれている遺産は、これこれの物件に間違いありません。」といった確認書に実印を押して証明しなければならないとする指導もあります。
 遺言書の内容によっては、押印を渋る相続人さんもいるようで、裁判に発展することもしばしばです。

 せっかく自らの死後、遺族が揉めることのないよう遺言を遺したとしても、実際に執行するときに揉めていたのでは、かえって争いの種をまくことになってしまいます。不要な相続争いを起こさないためにも、遺言書を遺されるのなら是非、検認手続も不要で、遺産の特定にも弁護士や公証人が関与する公正証書遺言を検討されるようおすすめします。ご遺族もきっと感謝されることでしょう。

平成24年5月22日
 弁護士法人白浜法律事務所 事務局事務長 田 村 彰 吾
 監修 弁護士 白 浜 徹 朗

遺言することが難しい人

意識がなくなっている人の遺言は無理です。手が動かないなどのことで署名ができなくても意思確認ができれば、公正証書は作成可能ですが(公証人法第39条4項)、会話もできないとなりますと、遺言書を作成することは不可能ということになります。親族の方であれば、目の動きとか、顔の表情などで、何を言いたいのかわかるということがあるかも知れませんが、公証人が理解できませんから、実際に言葉が話せなくなっているような方の遺言はできません。もちろん、これは体力がなくなったり意識が薄れて会話ができないという人の問題であって、手話が可能な方であれば、通訳を交えれば、遺言書の作成は可能ということになります。

ということで、遺言を書く方の状態が実際どうなのかということは、弁護士が実際に面談して確認するということになります。実際に面談したら、これは遺言書を書くなんて無理だと思うことはよくありますし、逆に、親族の方が難しいのではないかなと思っていた人でも、面談したら、遺言書が書けるなと確信できたりすることもあります。

もちろん、遺言を書くことに障害がある人については、後日、争いになることもありますから、それに備えておくということも大事なことになります。私の事務所で遺言書を預かっている人の中には、その備えのことでなるほどそんなことまでするのかと思っている人がいると思います。

また、遺言書が書けるかどうかという以前に、遺言書なんて書いてくれないだろうと親族があきらめている人がいたりもしますが、そんな気むずかしいような人でも、意外とあっさりと書くよと言ってくれたりしたこともありました。そういうところが、弁護士の仕事は難しく、また、おもしろいというところでもあります。

2012年5月14日  by 白 浜 徹 朗
プロフィール

白浜法律事務所

Author:白浜法律事務所
京都に法律事務所を構える弁護士法人白浜法律事務所です。
遺言に関する経験に基づく豆知識など公開していきたいと思います。

なお、特設サイトで遺言相談のご案内もさせていただいております。

遺言・相続あんしん相談室

最新記事
免責事項
このブログに記載した記事は、当事務所の弁護士やその職員が、遺言に係る事件に接したときの経験などに基づく個人的な所見や感想です。
法律をめぐる紛争は、個別の事情によって大きく結論が変わることがありますので、あくまでも参考としてご利用ください。

特に、紛争などが生じている場合には、素人判断で動くことなく、必ず弁護士に相談するようにしてください。
QRコード
QR
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。